酸洗処理とは？その概要を目的や注意点とあわせて紹介！

産業洗浄において重要な化学洗浄ですが、その一つの処理に酸洗処理があります。
酸洗処理は、どのような目的で行うものなのでしょうか。
また、酸洗処理は、使用する薬剤の種類や金属製品の材質に応じて、微調整を行う必要があります。
そこで、酸洗処理の目的や注意点について紹介します。

目次

☐酸洗処理の概要を解説！

酸洗処理とは、酸性の薬品の中に金属製品を浸す処理のことです。
浸すだけなので、容器、溶液、吊り下げクレーンなど、必要な設備は比較的安く用意できますし、作業工程は単純です。
浸した後に水で洗浄し、中和させてから乾燥させるだけだからです。

化学薬品を用いて洗浄することを化学洗浄と呼びますが、酸洗処理はまさに典型的な化学洗浄だと言えます。
化学洗浄の特徴として、隙間、部品の連結部分などの汚れを手間をかけずに除去できることがあるのですが、酸洗処理でもその特徴は存在しており、大きなメリットになっています。
また、脆いために力を加えられない製品の汚れを落とすことにも向いています。

☐酸洗処理の目的を紹介！

酸洗処理により、金属表面の不純物を除去できます。
表面の不純物とは、スケール、錆、バリ、傷、切削油、手の皮脂、ホコリや塵、汚れ、アルカリ脱脂液でできたアルカリ皮膜、電解洗浄でできた酸化皮膜などのことです。

酸洗処理によって、金属表面の不純物がなくなりますし、表面をざらつかせてくれるため、塗装やメッキをする前に酸洗処理をすると、剝がれにくくできます。

酸洗処理によって、ステンレスの不動態被膜を均一に張ることもできます。
不動態被膜とは、ステンレスに含まれるクロムが空気と触れて酸化することで形成される被膜です。
ステンレスがサビない理由は、不動態被膜がコーティングの役割を果たしているからです。

しかし、ステンレスの表面が汚れていると、被膜形成が上手く行われません。
酸洗いによってステンレスの表面を洗浄することで、全体に均一な剥がれにくい不動態被膜を張れます。
不動態被膜を均一に張ることで、ステンレスをサビさせないようにできます。

ステンレスの不動態被膜は、金属加工時の熱や傷によって破壊されてしまいますが、酸洗処理によって、ステンレスの表面に不動態被膜を再形成することもできます。

チタンをバレル研磨することで光沢を出したい場合は、研磨する前に、酸洗処理によって、表面の酸化皮膜層を除去しておく必要があります。

☐酸洗処理の注意点を解説！

酸洗処理をすると、金属の表面が梨地になったり、光沢が消えて白く濁ってしまいます。
光沢が必要な製品の場合は、酸洗処理ではなく、電解研磨やバフ研磨など、別の工法処理が必要です。
光沢が消えることからもわかるように、酸洗処理後の金属製品表面は素地が剥き出しになっており、サビたり黒く変色しやすいです。
そのため、できるだけ早く水洗や中和、防錆処理を施す必要があるでしょう。

酸洗処理では危険な薬品を使用するため、作業時に事故が発生しないよう、作業者に対する安全管理の教育指導を十分に行う必要があります。
例えば、少量の薬剤に触れただけでも重度の火傷を負うということや、薬剤の飛散や気化した成分の滞留の危険性を伝える必要があります。
また、保護メガネやマスク、手袋などの保護具を必ず使用すること、作業場の換気を十分に行うことなども大切です。

酸洗処理をすると廃液や亜硝酸ガスが発生するため、作業者の安全管理だけでなく、廃水処理設備や排気設備など、設備や自然環境に関する対策も行う必要があります。
廃液処理の設備は大掛かりですし、維持費がかかるため、専門の会社に廃液処理を依頼するのがオススメです。

酸洗処理では、金属製品の材質に応じて、酸の種類、配合比率、濃度、温度、浸す時間を設定しますが、この設定を間違えると、酸洗処理は失敗してしまいます。
失敗とは、例えば、酸が弱すぎて効果を得られない、酸が強すぎて表面が荒れてしまう、長時間入れたら一部が溶けてしまう、などです。
金属製品の材質と使用する薬剤の成分の相性を、よく見極める必要があります。

酸洗処理に使用する薬剤の中で、よく使われる薬剤は硫酸です。
硫酸は、強酸性の薬剤の中では比較的安価だからです。
製品の表面に食い込んだ砂粒などの異物に効果がある薬剤を添加しても、酸の性質がほとんど変わらないのが、硫酸の利点です。

しかし、硫酸は溶解作用が強く、金属製品を傷めてしまいやすいです。
そのため、硫酸には、製品の劣化を防ぐための薬剤を添加する必要があります。

人体への影響は、硫酸よりも塩酸のほうが軽微です。
硫酸の方が安いですが、塩酸の方が安全性は高く、薬剤添付の必要がないため、塩酸を使用する工場は多いようです。