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2022.06.23
錆に対して耐性があることがステンレスのメリットですが、一切錆びない訳ではありません。
ステンレスを溶接すると、錆びやすくなることもあります。
そこで、ステンレスの錆止め方法について紹介します。
ステンレスには錆への耐性があるため、全体が均一に腐食していく「全面腐食」は発生しません。
一方、「局部腐食」と呼ばれる部分的な腐食は発生します。
つまり、ステンレスの錆の原因は、局部腐食です。
ステンレスが錆に対して耐性があるのは、不動態化した酸化皮膜で覆われているからです。
酸化皮膜があるから、局部腐食が発生しても全面腐食にまで広がらないのです。
ステンレスでは、酸化皮膜の一部が壊れても、すぐに再生します。
クロムを11パーセント以上含んでいると酸化皮膜が発生するのですが、ステンレスはクロムを11パーセント以上含んでいるからです。
酸化皮膜を破壊する局部腐食には、孔食、粒界腐食、隙間腐食、応力腐食割れ、微生物による腐食、異種金属接触による腐食などがあります。
ステンレスが錆びるのは、局部腐食によって破れた酸化皮膜の再生に支障が出た時です。
孔食とは、虫食いの穴状に生じる腐食のことです。
酸化皮膜が破れると、その箇所が穴の起点となります。
まず、破れた箇所からステンレスの陽イオンが溶け出し、陽イオンが環境中に存在する陰イオンを吸い寄せます。
陰イオンの一つである塩化物イオンが穴に引き寄せられると、穴の中の塩化物濃度が高くなり、酸化皮膜が張られなくなります。
穴の中は酸化皮膜がないため、ステンレス本体の陽イオンが流れ出ており、陽イオンである鉄イオンが水と反応すれば水酸化第一鉄が生成され、穴の中で錆が発生します。
穴の中のpHは低いので、せっかく張られた酸化皮膜だけでなく錆も溶けてしまい、穴の腐食が進んでいきます。
孔食は、溶存酸素と塩化物イオンが存在する環境で発生するため、その防止方法としては、溶存酸素の除去、使用環境における塩化物イオンの低下、使用環境から塩化物イオンを溶け出させないステンレスの使用、耐孔食性があるステンレスの使用などがあります。
金属の分子である結晶粒同士の境界面のことを、粒界と言います。
粒界で起こる腐食が粒界腐食であり、原因は熱です。
ステンレスが600℃以上になると、炭化したクロムが流出します。
ステンレスからクロムが流出すると、酸化被膜を張るためのクロムが不足してしまいます。
対策としては、600℃以上に加熱して加工した後に、1000℃以上までさらに加熱して保持してから冷却する「溶体化処理」を行うことで析出硬化を起こし、耐食性を増すことが効果的です。
他の対策としては、加工するステンレスに粒界腐食しにくい種類を使うことが効果的でしょう。
隙間腐食とは、ミクロン単位の隙間に起きる腐食です。
隙間以外の酸化皮膜の酸素濃度よりも、隙間部分の酸化被膜の酸素濃度が低くなると、電池が発生し、隙間部分で腐食が進むのです。
対策としては、隙間を作らない、塵を取り除く、隙間腐食への耐性がある素材で隙間を作ることなどがあります。
応力腐食割れとは、腐食部分が割れる現象のことです。
粒界腐食が起きたステンレスの部位に、残留応力と、環境中に存在する酸素と塩化物が作用して、応力腐食割れが起きます。
対策には、腐食させない、応力が残らない手法で加工する、溶存酸素の除去、使用環境の塩化物イオン濃度を下げることなどが効果的です。
錆の中には、微生物が関わっているものがあります。
ステンレスの場合、鉄酸化細菌やマンガン酸化細菌などの好気性細菌が代謝した過酸化水素水が周囲を酸性にしたり、繁殖した菌やバイオフィルムが高い電位を持つようになって、腐食するのです。
対策としては、殺菌、バイオフィルムの除去が効果的です。
異種金属接触による腐食とは、ステンレスよりも低電位の金属にステンレスを接触させた場合、低電位の金属が腐食することです。
例えば、炭素鋼、鋳鉄、黄銅、アルミニウム、スズ、鉛などです。
これらとステンレスを接触させる場合、絶縁処理を施しておく必要があります。
対策としては、異種金属を接触させない、ステンレスとの電位差が小さい金属と組み合わせる、カソードとアノードの面積比を小さくすることなどが効果的です。
錆びやすいのは、汚れや水分の溜まりやすい箇所です。
例えば、傷、洗ったり拭いたりしにくい箇所、台や床と接している底面、加工されている箇所などがあります。
☐ステンレス溶接する時の工程を紹介!
塗装の前処理として、酸化皮膜を除去する必要があります。
酸化皮膜は錆を防いでくれますが、酸化皮膜の上から塗装すると、塗料が剝がれやすいからです。
塗装の前処理には、脱脂、水洗、表面調整、化成処理の工程があります。
脱脂は、表面の油分やゴミを除去する工程のことで、ショットブラスト法、水蒸気法、化学洗浄法があります。
各工程の合間に行われる水洗では、前工程の残留物を除去します。
スケールや傷を除去する表面調整によって、化成処理がやりやすくなります。
化成処理とは、表面に化学反応を起こして皮膜を形成することです。
クロメート処理、リン酸塩皮膜処理、黒染処理などの処理方法があります。
常乾塗料と焼付塗料の2つが、ステンレス用の塗料です。
常乾塗料はサイズの大きい制作物に使われます。
焼付け塗料は、宝飾品や工業製品など、多くの製品に使われます。
焼付け塗料を使ってステンレスを塗装する時の手順は、まず溶剤を用いた脱脂処理をした後に、塗布型クロメート処理を行います。
そして、下塗りプライマー、上塗り指定色を塗装し、焼付けて乾燥させます。
下塗りの後に上塗りをするのは、塗料膜を厚くするためです。
下塗りプライマーには、水性と油性があります。
ステンレスの場合、下地の強化や密着力を求めるため、油性の下塗り剤が適しています。
今回は、ステンレスが錆びる原因ごとの錆止め方法を紹介しました。
溶接すると、熱でクロムが外に出て行ったり、ミクロな隙間が生じたり、汚れが溜まりやすくなって、様々な局部腐食を引き起こしやすくなります。
そのため、ステンレスを加工する際は、錆びないような配慮をしておくようにしましょう。
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