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2022.10.04
本稿をご覧の皆さんは、黒錆加工をご存知でしょうか。
これは、名前の通り鋼材の表面に黒錆を施す加工です。
フェロマイト処理やSOB処理、アルカリ処理などと呼ばれることもあるでしょう。
今回は、この黒錆加工の特徴やデメリットについて紹介します。
ここでは黒錆加工の原理を紹介します。
どのような原理で黒錆を発生させているのかが気になるという方は多くいらっしゃるでしょう。
そもそも黒錆というのは自然的に発生するものではありません。
そのため、人工的に作り出されているのですが、一体どのように黒錆を発生させているのでしょうか。
黒錆加工では、鉄の表面上に安定した酸化鉄の膜を作り出します。
この膜を作ることによって、鉄の腐食が内部に浸透したりボロボロになったりすることを防げるのです。
具体的な生成方法としては、薬品を使用する方法と高温で加熱する方法があります。
2種類の加工方法についても紹介しておきます。
・アルカリ黒色酸化法
こちらは黒錆加工において最も一般的な方法と言えるでしょう。
酸化剤を添加した苛性ソーダ溶液を加工物に浸します。
そして、そのまま140〜150度で熱処理を施すことによって黒錆を生成します。
この工法の特徴としては、熱処理の温度が低いことや化学反応のスピードが遅いこと、寸法変化がかなり小さいことが挙げられます。
・水蒸気法
こちらの方法は、金属の焼戻し過程で水蒸気を入れる方法です。
水蒸気の過程を通すことで金属と水蒸気が酸化還元反応を起こします。
この反応によって、素材の表面に黒錆が発生するという仕組みです。
この工法の特徴としては、上記で紹介したアルカリ黒色酸化法よりも強固な錆を生成できるということです。
そもそも「金属にわざと錆を発生させるなんてなぜなのか」と思っている方もいらっしゃるでしょう。
ここでは黒錆加工の特徴を紹介していきます。
主な特徴は全部で5つあるので、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
特徴1:外観性の向上
黒錆という名前の通り、この錆は黒色です。
この加工を施すことによって深みのある黒色にすることができ、光沢を生むこともできます。
素材本来の良さを活かした質感に仕上がるでしょう。
高級感のある仕上がりになるため、工業製品にだけでなくインテリアにも採用されることが多いです。
特徴2:防錆効果の付与
黒錆加工をすると表面が錆によって覆われることはご理解いただけているかと思います。
この時に覆っている錆というのは、四酸化三鉄の不動態皮膜なのです。
この不動態皮膜のおかげで他の錆が発生しにくくなっています。
そして、この加工は塗装やめっきとは異なり、化学反応を利用したものです。
そのため、剥離してしまうということがありません。
特徴3:寸法変化が少ない
この加工によって形成される不動態皮膜は非常に薄いです。
厚みとしては1〜2マイクロメートル程度でしょう。
この薄さによって寸法精度が求められる製品においても問題なく加工ができます。
加工時の加熱に関してもそれほど高温ではないことから素材の変形も抑えられます。
特徴4:耐摩耗性や潤滑性の向上
耐摩耗性が向上するということは、表面のすり減りを抑えられるということですね。
また、潤滑性に関しては、防錆油のおかげで向上しています。
特徴5:価格が安い
先ほどの紹介でも登場した塗装やめっきは、黒錆加工よりはお金が必要です。
これらの特徴を踏まえると、黒錆加工の用途が非常に広いことがわかります。
この章の最後に黒錆加工の用途について紹介しておきます。
・寸法精度を維持したい製品
処理後に大きく寸法が変わってしまうと、後々の加工に影響を与えてしまいます。
しかし、特徴3で紹介したように黒錆加工は寸法変化が小さいです。
そのため、寸法精度を維持したい製品に採用されることが多いです。
・見た目をよくしたい製品
まさに黒色の製品にしたいという場合には向いていますね。
シックな黒色に染められるので、非常におすすめです。
・ツヤを出したくない製品
実は、黒錆加工は反射防止に用いることも可能です。
機械部品の光る部分にこの加工を施すことで、反射を防ぎ、作業効率の向上が期待できます。
・防錆効果を付与させたい製品
特徴の2ですね。
長期間錆びさせないようにするために黒錆加工をするということも多いです。
特徴の紹介ではこの加工の良い部分に焦点を当てていました。
しかし、実際はデメリットも存在しています。
そのため、ここからは黒錆加工のデメリットについて紹介します。
1つ目のデメリットは、黒色にしか加工ができないことです。
名前の通り、加工を施すと黒色になることはお分かりいただけたかと思います。
もし他の色に加工したいと思っていたとしても、この加工方法においては黒色にしか加工ができません。
若干の色味の違いは生まれるのですが、基本的に黒色です。
2つ目のデメリットは、効果が永久ではないことです。
効果が切れてきてしまったり、黒錆が取れていたりする場合には、再度加工を施す必要があるでしょう。
今回は、この黒錆加工の特徴やデメリットについて紹介しました。
黒錆加工は様々な特徴・メリットがあることをお分かりいただけたかと思います。
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